〜揺るぎない人生を生きるリーダーのための実践哲学〜 出口 光の天命と経営
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信長とミケランジェロの天命

 皆さん、こんにちは。
信長とミケランジェロの共通するところは何だと思いますか?

 15世紀のルネサンス時代、ミケランジェロはレオナルド・ダ・ヴィンチと名声を分かつ偉大な芸術家でした。「ダビデ像」やハリツケになり死んだキリストを抱くマリアを表現した「ピエタ像」など数々の名作を生んだのです。

 一方、地球の裏側で、信長は既存の権威をものともしませんでした。

 誰でも自由に商売ができる楽市楽座や、身分や職業を問わず優れた人物には「天下一」の称号を与えるなど、さまざまな革新的な行動で、日本の近代を開いたといわれる戦国時代の英雄です。

 これら二人は、中世から近代に移る時代の挟間に、革新的な足跡を残した天才たちでした。日本とイタリア、武将と芸術家、二人の天命は、全く異なるように思えますが、実は、重要な共通点があったのです。

 それは、智に溺れた行動!

 ミケランジェロは、20代でダビデ像やピエタ像を造り、天才の名をほしいままにし、次々に高い地位のパトロンを求めました。そしてついに頂点にまで上り詰め巨万の富を築いたのです。

 同時代のダヴィンチの銀行口座の残高も記録が残っていますが、ミケランジェロの銀行残高は、それを圧倒的に凌いでいます。晩年には、落ちぶれた貴族の娘を自分の甥にもらい、家系をも改造したのです。

 ここまでなら、よくある成功物語かもしれない。
しかしそれだけではありませんでした。

 ミケランジェロは、密かにもう一体の「ピエタ像」を彫り、それを持っていたのです。それは第二のピエタ(フィレンツェ)で、背後霊のようにイエスを抱きかかえる人物の顔を、なんと自分の顔に変えていたのです。神をも恐れぬ所業です。

 一方、信長は、安土城の敷地内に、自分を祀った創建寺を建立し、部下に拝ませました。

 さらには、安土城の横に、天皇を迎える場所である清涼殿を造ったのです。
近年の発掘によって、京都の清涼殿と同じ造りであったことがわかっています。

 しかも畏しいことに、謁見の間である「御幸の間」は、安土城側にあり、信長が起居していた天守閣から見下ろせるようになっていたというのです。

 つまり、天皇をも傍で見下ろす対象にしようとしたのです。
その後まもなく、信長は、部下の明智光秀による「本能寺の変」で、倒れました。

 この二人は、革新的な業績を残し、歴史に大きな足跡を記しています。
しかも強烈な審美眼を持った「智」の天才たちです。

 そして強大な上昇志向でと行動力ある「勇」の魂を合わせ持っています。 つまり、「智」と「勇」の偉大な人物だったのだと思うのです。

 しかし、真理に近づいたどんな天才でも、「智」の魂が狂うと畏しいことが起こることを、私たちに教えてくれます。

 自分は誰よりも真理を知っており、誰よりも優秀であるという「内なる声」が、自分は神であるという慢心に至らせたのではないでしょうか。優れた智の魂が曲霊(まがひ)に犯され狂魂になった瞬間です。

何もこれは信長とミケランジェロだけのことではありません。

 多くの優秀な人たちが、その優秀さゆえに、人を馬鹿にし、蔑み、自分が絶対的存在となっていく。 あなたの周辺にも、そのような人がいるのではないか。

 自分が優秀であればあるほど、業績を上げれば上げるほど、あなたの「内なる声」は、あなたに囁きかけます。

    「自分は正しいと!」

 信長もミケランジェロも希代の天才であり、歴史に名を留める人たちです。その二人が、天命を最後まで全うすることの難しさをも教えてくれています。

 「自分をもう一人の自分が見る」という「離見の見」をいかに発達させ、魂を磨いていくかが、私たちの取り組む課題です。それには、祈りが大切だと思うのです。しかもこの祈りには、落とし穴があります。

 このことは別の機会に書きたいと思います。

出口 光(2008/6/24)

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